ホリプロ

『スリル・ミー』(2019) 感想

ミュージカル『スリル・ミー』を観劇しました。今回の公演は、私と彼のペアが2組あり、運良くどちらも観ることができました。

★1月19日 19時 2階2H列 サンケイホールブリーゼ / 私:松下洸平さん、彼:柿澤勇人さん

★1月20日 16時 2階2A列 / 私:成河さん、彼:福士誠治さん

上演開始までの、劇場の静まった空間。それから始まるピアノのプロローグ、終演までのピンと張り詰めた空間が忘れられない。こんなに「時間を共有している」と感じられたことはなく、100分があっという間だった。

1日目の松下私×柿澤彼は、初演から組んでいるペア。一見、彼はサイコパス的な要素も持ち合わせているけれど、実際は私に対して好意的な感情を持っているようだった。そして対する私が、彼に対してのすごく一途な思いがビシバシ伝わってきて「報われてくれ…」と思わずにはいられなかった。最初の方はパワーバランスが完全に彼>私だけれど、途中から反対になるどんでん返しが面白い。松下私の、「待ってたよ」という台詞だったり、殺人のときのあたふたしている様子など、離れた視点で物語を見ているようで、その点が私が好きな理由だと思う。

2日目の成河私×福士彼は、1日目と本当に同じ作品なのか、と思うくらい違う作品だった。1日目のペアが対等な関係とするなら、2日目は完全に私が最初から最後まで話の筋を握っていた。一見こちらのペアも彼は暴力的で、恐ろしい存在なのだが、私がぞっとするような、リアルな狂気という言葉がぴったりだった。私から彼に対する思いも狂気じみているし、彼が不憫になるくらいだった。本当に成河さんのお芝居が恐怖すぎて、個人的に舞台でこんなに恐怖を感じたのは初めてだった。

そして、どちらにも出演されていたピアノの朴勝哲さん。最初のプロローグでは、一瞬で客席を世界観に誘い、「♪僕の眼鏡」での緊張感というテンションを上げてくれる演奏が本当に素晴らしかった。作品の音楽は、曲中に「間」があって、そこが緊張感を感じさせるポイントになっているのかなと感じた。また、スポーツカーを灯り2つだけで表現する手法が素晴らしかった。照明は勝柴次朗さん。

この作品はキャストによって、解釈が変わるところが本当に面白い。同じ台本なのに、こんなに感じ方が違うのは役者さんたちの力だし、お芝居って面白いな、と感じることができた。また、あの人が私ならこの人が彼かな…と考えるのも楽しい。ここで、私と彼が反対に演じることになるとまた違った作品になるだろうし、色々な俳優さんで観たくなる作品だった。