その他ミュージカル

ミュージカル『violet』全日程休止に寄せて

2020年4月8日。ミュージカル『violet』は、一度も幕を開けることなく休止が決まった。

私は、この作品が日の目を見ずに終わってしまうことが勿体無いと思って、(観ていないけど)思わず文章を書かずにはいられなかった。

この作品は、梅田芸術劇場と、ロンドンのチャリング・クロス劇場との共同プロジェクトである。演出はどちらも藤田俊太郎さんが担当し、ロンドン公演でのお稽古の様子はドキュメンタリーとなり、放映された。ロンドンで奮闘する藤田さんを見て、「言葉や文化の壁」というのをすごく感じた。藤田さんはとても才能豊かな方で、おそらく日本公演だったら彼の意図はすぐに伝わったのだろうけど、ロンドンではそれがあまり上手く伝わっていないように見えた。

そうして時間が経ち、公演が間近になってきた頃、作中から「マイ・ウェイ」という曲のプロモーション映像が、公式より配信された。

私はこの曲を聞いて、すぐさま虜になってしまった。重ね合うメロディー、前向きな歌詞(「不安など捨て去って 飛び乗って行こう」)。
何よりもカンパニーの作品に対する思いがこの一曲に現れていたと感じた。作品のキャストを見ても、島田歌穂さん(『レ・ミゼラブル』エポニーヌ役)や吉原光夫さん(『レ・ミゼラブル』ジャン・ヴァルジャン役、ジャベール役)、エリアンナさん(『ファントム』カルロッタ役)など歌唱力に定評がある方が多い。そのため歌が素晴らしいことはもちろん、歌詞に思いが乗せられていて、それを伝えようとしていたことがとっても嬉しかったのである。

私は毎日この動画を見たり、原曲を聴いたりして、観劇できる日を心待ちにしていた。コロナウイルスの蔓延で、一時期は『violet』は前半日程を休演し、振替公演を行う予定になっていた。不謹慎かもしれないけれど、その時点ではまだ「観れるかもしれない」という希望を持っていた。

だが、2020年4月8日、全日程休止の発表がされた。このことに関して、演出の藤田俊太郎さんがコメントをしている。

「この公演に対して中止ではなく休止という言葉を使います。現段階での上演は叶いませんでしたが、必ずこの素晴らしいカンパニーでの初演を迎えたいと思っております。諦めずにミュージカル『VIOLET』の今を届けることを模索し続けます。」

私も、『violet』の上演がきっと実現されることを祈っている。今回作品は観れなかったけど、素晴らしい機会を与えてくれてありがとう。

次は劇場で会えますように。